定量調査は、人数や割合、点数などを集計し、決めた条件のもとで傾向や違いを調べる調査です。定性調査は、言葉や行動、その場の状況を詳しく捉え、考え方や背景への理解を深める調査です。どちらを使うかは、知りたいことと、その結果で何を決めるかによって変わります。
BtoBでは、利用者、比較検討する人、購入を決める人が異なる場合があります。同じ「導入理由」でも、誰の、どの時点の経験を聞くのかが曖昧だと、調査方法を選んでも問いに答えられません。この記事では、サービスの選定や利用状況を調べる場面を例に、二つの調査の役割と組み合わせ方を整理します。
定性調査と定量調査の違い
違いを整理するには、回答者の人数だけでなく、どのような情報を集め、何を明らかにしようとしているかを見ます。少人数なら必ず定性、多人数なら必ず定量という分け方ではありません。
| 見る点 | 定量調査 | 定性調査 |
|---|---|---|
| 問いの例 | 何人が利用しているか、どの項目を選んだ人が多いか | どんな経緯で選んだか、何を不安に感じたか |
| 主に扱う情報 | 件数、割合、点数などの数値 | 発言、行動、やり取り、場面の記録 |
| 方法の例 | 同じ設問で行うアンケート、数値記録の分析 | インタビュー、観察、文書や会話の質的な分析 |
| 結果の示し方 | 対象と分母を示した集計表、グラフ、比較 | 状況に沿った記述、事例、発言の引用、テーマの整理 |
| 読み方の注意 | 標本や設問による限界、数値だけでは分からない背景 | 対象の選び方と文脈、発言の数を全体の割合に読み替えないこと |
定量調査でも理由を尋ねられますが、用意した選択肢では捉えきれない経緯が残ることがあります。定性調査で共通する話が見つかっても、それだけで市場全体の何割が同じ考えかは分かりません。方法ごとに、結果からどこまで言えるかを確かめます。
BtoBの調査方法は、決めたいことから選ぶ
調査の依頼文に「顧客を理解したい」とだけ書くと、必要な情報が広がります。「どの判断に使いたいか」を先に書くと、定量、定性、既存資料の確認のどこから始めるかを考えやすくなります。
利用や選定の広がりを知りたいとき
「対象者のうち、過去1年にどの情報源を使った人が何割いるか」のように、項目と分母を決めて傾向を把握したい場合は、定量調査が候補です。ただし、調査に答えた人が、知りたい相手をどの範囲で表しているかは別に確かめます。
ビズサーベイは、2026年11月にBtoB購買担当者を対象とするインターネット調査を予定しています。公開している計画は400人・本調査12問です。ここで示しているのは実施前の設計で、利用率などの結果はまだありません。人数が400人だからBtoB市場全体をそのまま表せる、という計画でもありません。
選んだ背景や言葉の意味を知りたいとき
「料金が高い」という回答があっても、月額費用が高いのか、導入時の工数が大きいのか、社内稟議の予算を超えるのかは、その言葉だけでは分かりません。経験した順序や場面を詳しく聞くインタビューが、こうした意味を捉える手段になります。
この場合は、期待する結論を相手に確認してもらうより、具体的に何が起きたかを尋ねる進め方を勧めます。「やはり価格が決め手でしたか」ではなく、「比較の途中で、どのような条件を確認しましたか」と聞く例です。回答者が話した事実と、分析者の解釈は分けて記録します。
すでに記録があるかを確かめたいとき
知りたいのが利用回数や問い合わせ件数なら、アンケートで記憶を尋ねる前に、使える業務記録がないかを確認します。記録にない判断理由を知りたい場合は、その後に聞き取りやアンケートを組み合わせる方法があります。
AAPORの調査実務ガイドも、問いに答える方法がアンケートでよいか、既存のデータやほかの方法が必要かを計画時に検討するよう勧めています。新しい調査を行うこと自体を目的にしない考え方です。
定性調査と定量調査を組み合わせる二つの進め方
二つの方法は、どちらか一つに決めるだけでなく、段階を分けて使えます。以下は編集部が作成した設計例で、ビズサーベイや顧客が実施した成果事例ではありません。
定性から定量へ:選択肢に入れる内容を探す
「サービスを選ぶ際の障害」を調べるなら、まず異なる立場の人に、比較の経緯を聞く方法があります。その中で出てきた言葉や場面を整理し、同じものを指す表現をまとめたうえで、アンケートの選択肢案を作ります。
その際、「料金」と「費用対効果」、「使いやすさ」と「社内で操作を教える負担」を同じ項目にしてよいかを考えます。聞き取りで出なかった理由がないとは限らないため、既存資料も確認し、「その他」などで拾える余地を残します。
定量から定性へ:数字の背景を調べる
アンケートで、ある条件の回答者から特定の選択肢が多く選ばれた場合、その経緯を聞き取りで確かめる方法があります。後の聞き取りで説明が見つかっても、それが最初の集計に答えた全員の理由だと決めつけないようにします。
J-PALの定性手法に関するガイドは、研究の設計、実施、結果の理解など、複数の段階で定性手法を組み合わせる役割を説明しています。同資料は無作為化評価の文脈ですが、手法を組み合わせる目的を先に決めるという点は、BtoB調査を考える際にも参考になります。
本調査前の聞き取りと、顧客理解の定性調査を分ける
アンケートの事前テストでも、回答した人に「どのように読んだか」を聞くことがあります。ただし、設問が理解されるかを確かめる聞き取りと、顧客の行動や判断を調べる定性調査では、目的が違います。
米国国勢調査局の設問テストの解説は、質問の解釈や答え方の問題を調べる方法として認知インタビューなどを紹介しています。自社の数人に設問を読んでもらっただけで、顧客のニーズを調べ終えたという扱いにはしません。
事前テストでは「この言葉をどういう意味で読みましたか」、顧客の経験の調査では「そのとき何を比較し、どう進みましたか」と、問いの役割を書き分けます。同じ相手に両方を聞く場合も、どの目的で得た話かを記録に残します。
調査の依頼前に埋める設計メモ
方法や人数を先に固定する前に、次の項目を一枚に整理する方法を勧めます。人数や期間の標準値を示すシートではなく、依頼先と調査の範囲を相談するための型です。
今回決めたいこと: まだ分かっていないこと: すでに使える資料・業務記録: 対象者の立場(利用・比較検討・決裁など): 調べる経験と期間: 集計して知りたいこと: 経緯や背景を詳しく聞きたいこと: 先に行う方法と、その理由: 次の方法へ渡す情報: 対象者の選び方と、含まれない人: 分析・記録・引用の方法: 結果から言える範囲と言えない範囲: 公開する場合の説明項目:
ビズサーベイは、調査方法とデータ利用ポリシーで、対象、期間、有効回答数、方法などを記事に示す方針を公開しています。定量か定性かという名称に加えて、「誰から、どんな条件で得た情報か」を読者が確認できる形にすることを重視しています。
発言の細かさも、回答者の多さも、それだけで結論の強さを決めるものではありません。知りたい範囲と実際に得られる情報を合わせ、残った不明点を次の調査につなげる進め方を勧めます。
評価の選択肢を具体化する際は5段階評価の作り方と集計方法、対象者への案内はアンケートの依頼文・メール例文で確認できます。
参考資料
確認日:2026年10月26日。比較表、BtoBの場面例、記入シートは編集部作成です。
